2018年3月28日水曜日

[Switch] 返校 -Detention- トゥルーエンドまでの道







スタート画面の時点で怖い。Switch版 返校 -Detention- をプレイしました。

強権政治が敷かれた1960年代の台湾を舞台とするホラーアドベンチャーゲーム。アクションを要する部分はほぼ無く、基本的に謎解きで進行されます。『返校』は文字通り"学校に戻る"、『Detention』は"拘留"や"居残り"という意味。
時代背景に詳しければより楽しめるけど、思想統制が行われていたことだけ理解できればストーリーの紐解きには支障ない。台湾の文化をふんだんに出しつつ、違和感なく説明も入れてくれる。






プロローグ
授業中に少しうとうとしていたら、辺りは真っ暗。黒板には台風警報の文字。人一人いない夜の学校を男子学生のウェイが探索するところからストーリーは始まります。



紙を拾うことで増えるメモ。ストーリーの補完や攻略に役立つ
移動画面は全て2Dの横スクロール。スティックで移動し、何らかのアイコンが出現したところでAボタンを押すと物を調べたり扉を開けたり。歩いているだけで全てのオブジェクトを虱潰しにできる。





不自然な場所で眠っていた女子学生のレイと同行し、学校の出口を目指します。



帰れないのはホラーゲームの定石。
ここでの不安感を抑える二人のやり取りがとても良かった。学生ながらに落ち着いていてどちらも頼りがいのある印象。多分この二人なら大丈夫だろう、と思わせた辺りでプロローグは終了。





操作キャラクターがレイに変更され、本編へ


ここからはいわゆる敵キャラクターの悪霊が出現。レイの手前で蹲っている女性がそう。この幽霊は呻き声をあげながらその場をフラフラ往復していますが、近付くと腕を振り上げて襲ってきます。ZRボタンで息を止めると通り過ぎることが可能。勿論、息を止められる時間には限界があります。


セーブできる祭壇。幽霊に殺されてしまってもペナルティ無しで再開できる

正直、難易度は易しいです。謎解きは使用できるアイテムと未解決のオブジェクトを覚えていれば自ずと察しがつくし、幽霊はとにかく息を止めるだけでやり過ごせる。前述したように仕様上アイテムも取りこぼしにくい。

何が障害になるかというとやっぱりホラー演出。
幽霊に追いかけられてもシステム的には大したことがない。でも声が怖い。ビジュアルに露骨な異常さはないのに、ぎこちない動きで近付いてくる様が最高に不気味。
扉を開けたり階段を下りたりの移動で挟まる読み込み画面。この最中にも、自分を追いかけていた幽霊の未練がましい声が聞こえたり、主人公一人の心許無い足音が響いたり。








プロローグでの安心感から一転、更に不気味に変容した学校を探索しなくてはいけない。




急に場面が切り替わり、怪奇現象に見舞われ、それでも主人公のレイが常識的な思考をするのがこの怖さの肝のように思う。レイが取り乱していないからプレイヤーもつられて冷静に物事を考え、だからこそ恐怖演出にいちいち脅かされるというか。





文字が縦書きなのも雰囲気あって良い。

所々でゾワッとさせるものの、視覚・聴覚への直接的な怖さは控え目。恐ろしい顔が画面いっぱいに!とか急に大音量の叫び声!とかビックリ系演出には特化していない。



手掛かりはゲーム進行における重要なヒント
アイテム欄には刃物と器があり、そして血といえば心当たりは…。

『ゲームを進行させる為にやらなくてはいけない』ことをプレイヤーが考えてレイに実行させる。この行為が実に気味悪いので、プレイ中は鬱屈とした息苦しさを感じる。謎解きが単なるパズルではなく、不快感を伴って情報や道筋を得る手段になっていて、ホラーに対するゲーム性の落としどころが上手だと思った。




全ての謎解きに露骨なヒントは存在しないので、見落としや思い違いで行き詰まる場面もある。
以降は攻略を含んだエンディングまでのネタバレあり。


ここで引き返す人は折角なので公式トレイラーをどうぞ。
この曲欲しさにiTunesでサントラ買いました。
















序盤で使いどころに悩みそうなアイテムは二つ。シンナーと血液。

シンナーは魔除けの描かれた扉に、
血液は文字が彫られた机に使用できる。使用後に手帳で写し取るのも忘れずに。





学校の謎解きをクリアすると急にレイの自室へ場面転換。動じないレイ。ますますこの状況が夢なのか現実なのか不明瞭になるけど、むしろただの回想なのかもしれない。









場面は再び学校へ。冒頭の悪霊がいなくなる代わりに提灯持ちが出てくるように。


この章は謎解きが多く、台湾文化ならではの演出も多め




冥銭を燃やす時のアニメーションはなんだか無性に好き。
おどろおどろしいビジュアルだけど妙に綺麗なシーンも散りばめられている。



基本的に怖いけど。粗い実写はもうそれだけで怖い。








日本製の建築物も出てくる。レイの感想通り、歩く度に床が軋んで嫌な雰囲気。





提灯持ち。遭遇するとレイが短く悲鳴をあげるので分かりやすい。目を合わせないよう反対へ向き、息を止めていれば通り過ぎていく。









カセットテープの四番目のトラックを再生すると、短いメロディが繰り返し流れる。


このメロディをピアノで弾きます。ホラーゲームってピアノ弾かせる率高くない?
ただこれは血の付いた白鍵のみを使うので、メロディさえ覚えれば音感無くても大丈夫。覚えて奏でろ系の謎解きが大の苦手な私でも大丈夫だったから多分誰でも大丈夫。

一応正解を書いておくと、血痕のある白鍵を左から1,2,3,4,5として
弾く順番は『1→2→1→5→5→4→3→2→1』です。左右左、一番右から左へ。覚えやすい。



この謎解きをクリアしたら拍手喝采!
ビビりながらSSボタン押そうとして-ボタン押してオプションが出て更にビビりました。一番冷静でいられなかったシーン。褒められたのに。





空から雨のように紙飛行機が落ちてくる





赤いフィルムは映写機にセットして隣の視聴室で閲覧。
意味ありげな番号が映し出されるもののどこで使うのか分からず、数十分悩みました。番号といえば鍵を開ける暗証番号という思い込みが悪かった。『025121』という数字は職員室の黒電話で使います。さっきのピアノとこの番号は手帳にメモされないので暗記が必要。




謎解きに行き詰まるとマップを往復するようになるので提灯持ちにも慣れたもの。
目さえ合わなければ棒立ちで良いんじゃない、と思い息を止めずにいたら


くちゃっと殺されました。このゲームで殺されたのはこれが最初で最後だった。


屋外で目覚めて坂を上っていると老婆に助言される。提灯持ちは元々…というセリフも話してくれたので、これを見るためにあえて一回殺されるのも有りかと。



坂を上りきると意味深なメッセージの後、最後にセーブした祭壇から再開。
ちなみにセーブしてから殺されるまでの間のことはリセットされません。取得したアイテム等はそのまま。デメリットは祭壇に戻されるという点のみ。




気を取り直して黒電話で『025121』をダイヤルする。
きっと怖いことが起きると思ってるのに、自分の手でダイヤルを回させるこの辺りも怖い。







回想シーンとアイテムの入手。画像があまりにアレなので『読書会のリスト』は隠語なのかと短絡的に考えましたが、説明文を読む限り本当はただの紙だそうです。
この辺りからレイの思考に不安定さが見えてくる。




「忘れたのか」「思い出したくないのか」は形を変えて何度もレイに向けられる言葉。
最後までプレイするとこの意味も、それを言うキャラクター像の意図も分かるようで面白い。







異常な状況に正常な反応をしなくなってきたレイ。城隍神(じょうこうしん)に自身の未来について尋ねます。これはポエ占いといって、三日月形の石あるいは木片を投げ、落ちた状態から結果を見る民間占いのひとつ。


陰杯は否定、聖杯は肯定。笑杯はどちらでもない・答えられないという意味。


レイの苦悩が分かるシーンでもあり、冥銭のようにアニメーションが好きなシーンでもある。
堅いポエが転がるカシンという音が心地良い。






城隍神は土地神、最も偉い都の守護神らしい













ここからはレイの過去を辿ることに。ちらほら出ていた家庭環境についても、何の問題があってどうなってしまったのか、大まかに分かっていきます。





電気を消すと赤く発光する、目をこすり取られた写真。
調べると赤い液体を満たしたコップが手に入ります。これを透明な水たまりに注ぐことで、扉を開ける順番が分かるようになる。






赤い液体を入手した時、両親の写真に短針と長針が表れていたので、その時間に時計を合わせる。ただし写真を正しい向きに戻した状態で考える必要がある。

左側、父の時計は『6時45分』。右側、母の時計は『1時0分』が正解。






セーブや読み込みで登場していた紙飛行機をアイテムとしてゲット。
レイにとって前向きなシンボルであることが分かる。




鏡の前で電気を消すと、鏡の中に帽子をかぶった男が現われる。自分と逆向きに進もうとしている時があるので、その鏡の前だけ電気を点けていくと扉が開きます。



父親の書斎を抜け、自宅の脱衣所のような場所で硬貨を入手。




豚の貯金箱に入れると、映画のチケットになります。やけに辛辣な台詞。





映画のチケットを使用後に父親の書斎に戻ると、鏡の中で見た帽子の男が一瞬現れて、この有様。落ちているメモを見ると父親はどうやら…

夫婦喧嘩・浮気・身辺調査を示唆する情報が出た後のこれだったので、父親の結末が不可抗力なのかそうでないのか不明。家庭内事情を顧みれば不幸な出来事としては描かれていない気も。母親が「母さん」呼びなのに対し、父親は時折「あの男」と呼ばれているし。
レイが帽子をかぶった男を扉へ導いたようなギミック、脱衣所の服から硬貨を抜き取る演出、メモから分かる母親の態度に帽子の男の『喋るな』といったジェスチャーといい、
なんとなく後ろ暗い何かがあるように感じるけどゲーム内での情報はここまで。




レイの過去を辿るのもここで終わりです。









ここからは最終章。返校には二種類のエンディングがあります。
最終章で全ての条件を満たしたトゥルーエンドと、そうでない場合のエンド。条件を満たすにはレイの影から投げかけられる4つの質問で正しい回答を選び「あなたは、私」という台詞を見る必要があります。直接的なヒントはありませんが、今まで見てきた過去を踏まえて一番前向きで行動的だと思われるものが正解です。

一度来た道を戻って隠しアイテムを手に入れるとか、序盤の行動でルートが分岐するとか、そういった捻くれた仕掛けが無いのもこのゲームの良いところ。



1問目の正解は「自分自身を失うこと




最終章にも少しだけ謎解き要素あり。ついてくる影は一度右まで連れて行ってから、自分はそのまま階段を下りて、左から階段を上がり、もう一度部屋に入る、というちょっと面倒なもの。もっとサクサク進めるものだと思っていたから少し悩んだ。




2問目の正解は「逃げ出す…


3問目の正解は「自分の運命をつかみ取る


4問目の正解は「取り戻すために行動する







屋上で煙草を吹かす男性を見た後、階段を下りて、ここにレイの影がいたらトゥルーエンド失敗です。







自分の影から罵られ、地獄のような道を歩き、最後にあるアイテムを手渡されたらもう何処にも行き場はありません。諦めましょう。これはこれで今まで見てきたストーリーの結末として納得のいくラストです。一回くらいは見ておきたい。

私も三回ほどこのエンディングを見ました。
で、不思議なのが、4回の質問には正解を答えているんですよね。


最終章にもセーブポイントがあるのでやり直してみるものの、相変わらず地獄行き。






もしかして何か勘違いをしているんじゃないか?最初の質問を実は間違えていたとか?
何はともあれ詰んでいるっぽいので、四章の最初からやり直し。



質問にはやはり間違えていなかった様子。
これ以上は心当たりがないな…と思いながら進めていると、


回想を見た後で現れるメモを拾っていなかったことが判明。
机の上にぽつんと現れていたのに、背景の変化に気を取られて見逃していたらしい。トゥルーエンドでは最終章で拾える3つのメモに対する補完があるので、これも条件で間違いなさそう。





階段の先にレイの影はなく、代わりに古びた紙の紙飛行機を手に入れます。



ここまできたら後はトゥルーエンドを迎えるだけ。
おめでとう。

トゥルーエンドの坂道では見覚えのある老婆も


決して明るい結末ではないけど、ここにきてタイトルが回収され、ハッキリしていなかった各登場人物の現在を知ることができます。心身が回復しないまま憑き物だけ落ちたような心地。



総プレイ時間はおそらく五時間ほど。いや面白かった。
意味のあるギミックと、物悲しさや心細さをぐっと表現してくるグラフィックに、背筋をざわざわさせてくる効果的な音がついて、興味深い他国の歴史も垣間見れるとても満ち足りた内容だった。 驚かせ方や難易度がすごく自分好みというのもあるけど、プレイしてクリアしたことがとても有意義に感じられるゲーム。


トゥルーエンドを見るとスタート画面がちょっと愉快になります。
全て知った上で最初から始めるのと、忘れた頃にまたプレイするのが楽しみでもある。